『カウンター!』 後編

 朝昼と食時の時間も忘れてセックスし続けていた僕たちは、三時頃にもなると空腹を感じ始めた。とは言っても、僕の部屋にはろくな食材もなく、この「数字」をさらして外へ買いに出るのも気が引けたので(実を言えば僕としては外へ出てみたかったのだけど、姉さんが随分と渋ったので)、近所の中華料理店から出前を頼んだ。
 岡持を下げて出前に来たのは、ユカリだった。彼女は店の一人娘で、ついでに言うと僕とは幼馴染みの間柄だ。何があったのか、ユカリは真っ赤に泣き腫らした目を擦り擦り、岡持ちから湯気の立つどんぶりを取り出した。僕は代金を支払いながら、
「えっと、何で泣いてんのユカリ。喧嘩でもした?」
 ユカリは頷き、いつもの弱々しい口調で答えた。
「お母さんと喧嘩しちゃって。今日は出前もお前がやれって」
「なるほど。でもこんな日に限って出前って、運が悪いのな」
「あ……違うの。こんな日、だからなの」
 そう言うと、ユカリは目を伏せたまま、おずおずと自分の頭上を指差した。僕は、凄く居心地が悪くなった。
 ユカリは絵に描いたような引っ込み思案で、知らない相手に話し掛けられると、「あ、あ、あの」とか「す、す、すみません」とかいう返事をしてしまうほど内気な性分だ。なので当然、僕はユカリの「数字」は恐らくゼロだろうと思っていたのだけど、
 彼女の名誉の為に、具体的な数値を表記するのは止めておこう。ただ、僕の予想を数桁上回っていた、とだけ書いておく事にする。
「ニュース見たお母さんに、この『数字』見られちゃって……どうしてアンタの方がアタシより多いんだって」
 僕は必死に目を逸らしながら、ぼりぼりと頭を掻いた。確かに、ユカリの母親は「ふくよかだが色気のない体格」だ。
「あ、う、うん、じゃあ早く仲直りしなよ。彼氏にもよろしくな」
 僕は早々に話題を切り上げ、ユカリを見送った。僕はどんぶりを持ち上げながらも、あの歳であの回数をこなすためにはどれほどのペースでしないといけないのか、と思わず試算してしまう。
「遅いぞ、ヒロ」と怒鳴る、姉さんの声が聞こえた。

 それからまた一戦交えた後、僕らはシャワーを浴びる事にした。昼過ぎに続いて二度目のシャワーだ。試しに誘ってみると、意外にも「一緒に入ってもいいよ」という嬉しい返事が返ってきた。
 ユニットバスは狭いので、ふたり一緒に入ると窮屈で仕方ない。姉さんは「別々にしときゃよかった」と文句を言いつつ、膣の中に溜まった精液を掻き出していった。情緒のかけらもない仕草だったけれど、でも恐ろしく卑猥な光景だった。朝も早くからずっと酷使されていた僕のペニスは、呆れた事にまた膨張し始めた。
 あられもない姿をさらしたまま、
「また、こんないっぱい溜まってたんだあ。気持ちよかった?」
 と姉さんが聞いてくるので、僕は仕方なく正直に答える。
「そりゃあ……気持ちよかったよ」
 すると姉さんは唇を尖らせて、「ずるい」と言い放った。
「あたし、まだそんなによくないのに。男はいいわよね、最初から気持ちいいんだもん。ずるいずるい」
 姉さんは、だだっ子みたいな事を言う。僕は肩をすくめて、
「でも女の人って、男よりずっと感じるようになるとか聞くけど」
「それ、聞いた事あるけど……いったいどーやって調べたのよ。両性具有の人でもなきゃ、そんなの分かるわけないじゃん」
 そう言われると、そりゃ確かにそうだ。
「けどまあ、慣れてくると感じるようになるのは確かだろ?」
 僕は浴槽の中にしゃがみ込み、姉さんのあそこへ人差し指を挿し入れた。軽く抜き差しすると、姉さんは甘い声を漏らして、きゅっと僕の指を締めつけてくる。
「こらぁヒロ……そりゃ少しは感じるようになったけど……あは、そんなに擦っちゃ、だめ……だめだってばぁ」
「じゃあさ、今日は姉さんが気持ちよくなれるまで、しよっか」
 そう言いながら親指の腹でクリトリスを揉んでやると、姉さんはぶるぶると身体を震わせながら、何度も何度も頷いた。
「……して。お姉ちゃんの身体、もっと感じやすくしてよ」
 僕は無言で頷き、姉さんのおねだりに応える事にした。
 僕は何度かのセックスで徐々にほぐれ始めた膣を人差し指で掻き混ぜながら、包皮から半ば頭を出している姉さんのクリトリスを舌先で舐め上げた。固くなりつつある小突起を上下左右に転がしてやると、姉さんの喉から断続的な嬌声が飛び出してくる。
「ひっ……いっ、いいぃ……舐めて、ク、クリきもちいいよう」
 姉さんの股間から僕の鼻先へと漂う空気には、石鹸の匂いと混ざり合った性臭が感じられる。フリルみたいに重なり合った膣内部の肉襞をほじくり返しながら、弱々しく震える下腹やへその周りを舐め回していくと、姉さんの陰唇はぽってりと膨れ上がってきた。どうやら、姉さんは欲情し始めたらしい。
 僕は膣から指を抜いて立ち上がると、姉さんを壁向きに立たせ、背後から覆い被さっていった。朝から騎乗位やら側位やら後背位やら座位やらといろいろなパターンを試しまくっていたのだけど、そういえば立位はまだ試していなかった。
 僕は勃起したペニスを手で押し下げ、亀頭を花びらの内側へ滑らせて、物欲しげにひくつく姉さんの膣口へと狙いを定める。
「後ろから犯してあげる……って、うあっ!」
 口上を述べ終わる前に、僕のペニスはぬめやかな膣壁に包み込まれた。姉さんが自分から尻を突き出して、僕の勃起を咥え込んだのだ。不意をつかれて、僕は女の子みたいな声を上げてしまった。
「あ……太ぉい。あたしの中、広がるの……分かるよっ」
 朝からの「学習」によって、姉さんは入口と奥の辺りがよく締まると分かっている。その2点を中心に僕を締めつけながら、姉さんはしきりに腰をくねらせて、僕に抽送をねだった。
「じっとしてないで……もう、したくないの?」
「まさか」
 僕は両手で姉さんの腰を掴み、ぐいと引き寄せた。まだ窮屈な膣の中でめくれ返った肉襞が、僕のペニスをまんべんなく撫で上げるのが分かる。
 そのひと突きで、僕と姉さんは完全に発情した。狭苦しい浴槽の中で、涎と汗にまみれて、僕らは不恰好に性器を擦り合わせた。
「そこ、好きっ……奥の、当たるの……あ、あ、そこ、そこッ!」
「すげ狭い……キツいよ姉さん」
 後ろから突き回された姉さんは、次第に上体を目の前の壁へ預けていった。僕が突き込むたびに乳房が壁に圧し潰され、姉さんはわけの分からない喘ぎ声を漏らしながら、目の前の壁を舌で舐めた。
「あひッ……すごいようヒロっ、ヒロっ、すごいぃ、いいッ!」
 今日おぼえ立ての快楽に身も心も蕩け切った様子で、姉さんは叫んだ。数時間前には破瓜の痛みを訴えていた瞳から、堪え切れない悦楽の涙が流れ落ちていく。姉さんは僕の名前を呼びながら、何度か小さな絶頂を迎えた。
「これで『数字』が増えたら、明日からはしなくてもいいよね?」
 僕は腰の動きを抑えて、わざと意地悪な質問をする。すると姉さんはぶるぶると首を振って、
「だめっ、するの……これからもするのっ、毎日したいのっ!」
 姉さんは怒ったような声で言い、膣を引き締めた。僕は思わず苦笑しながら、勢いを乗せたペニスを深々と送り込む。膣肉を押しのけて進んだ亀頭が、こりこりとした子宮口に突き当たった。
「ああ、あ、またイクようっ……おかしくなっちゃうよう!」
 我慢できなくなっているのは、僕にしても同じだった。
「イクようヒロっ、お姉ちゃんイっちゃうようッ!」
 姉さんの絶頂を見計らって、僕も我慢を止めた。その瞬間はすぐに訪れ、今日何度目になるのか、僕はまた姉さんの奥深くへ射精した。姉さんの膣肉がひくひくと収縮し、僕をゆっくり包みこむ。
「……また、中に……出されちゃった」
 寝言みたいにか細い声で、姉さんはそっと呟いた。

 夕方になった。
 フェラチオを続ける姉さんの髪を撫でてやりながら、僕はテレビのリモコンを取り、チャンネルをニュース番組に合わせた。
 早くも世間は「数字」に慣れつつあるようで、ブラウン管には、帰宅中でインタビューを受ける人々が映し出されている。
「いや、最初は驚きましたけど、別にいいんじゃないですか」
「ほらほら、あたし見た目より遊んでないでしょ? ねねね?」
「うちの家内、帳簿に回数つけてるんスよ。浮気バレちゃうなあ」
「止めてください、こっちへ来ないで下さい」
「拙僧は姦淫など……あ、いや、これはその、若気の至りで」
「えー、現在100回目記念の相手を募集中です」
「お父さんお母さん、ごめんなさいごめんなさい」
 嬉しそうな奴、悲しそうな奴と、道ゆく人々の反応は多彩だ。他のチャンネルに変えてみると、吉本の若手芸人が、早くも「数字」をネタにしたコントで笑いをとっていた。
「お巡りさん、僕たちの中に連続強姦事件の犯人がいます!」
「でかい『数字』、お前だけやんけ!」
 僕がテレビを見ている間も、姉さんのフェラチオは止まらない。亀頭に被せた唇を忙しなく上下させ、涎にまみれた舌を裏筋に絡めて、僕のペニスを執拗に貪り続ける。徐々に限界が近付いてきた。
「おうおうおえいあいあうあ」
「ちんぽ咥えて喋るのは止めなさいって。きもちいいじゃねーか」
「んぷ、ふう……あのね、ロンドンの兵隊さんの帽子、見た事あるでしょ? バッキンガム宮殿の護衛してる人たちとか」
 ペニスを吐き出した姉さんは、今度は下の袋を揉み立て始めた。感じてしまっているので、もう玉が迫り上がって来ている。
「あ、あのすげえ長いヤツね。それで?」
「あの帽子かぶったら、『数字』も見えないのになって思って」
「……まあ、そうだろうけどさ。あんなの被って出社する気?」
「そうじゃないけど……でも近親相姦やっちゃうのと比べたらさ、まだマシかなーとか思っちゃって」
「あ、後悔してるんだ」と、思い切り意地悪な声で言ってやると、
「馬鹿ね。何にしろ終わった事だし、問題は解決したんだから結果オーライってヤツよ。男の子が小さい事がたがた言わないの」
 姉さんは威勢よく言い返し、舌を伸ばしてペニスの先端をちろちろと舐めた。僕も負けじと、姉さんの股間に手を差し入れる。
「うわ、びしょびしょ。ったく、今日が初めてだったくせに、何でそんなにエロいんだよ姉さんは。このスケベ」
「おーおー、ナマ言うじゃん。勢いに任せて実の姉とやっちゃったのは誰よ。不道徳よね? 人倫にもとる行為よね?」
 僕と姉貴は、互いの性器をまさぐりながら睨み合った。
「淫乱ОL」
「鬼畜大学生」
 僕らは間の抜けた罵声を投げ交わして、ベッドへと倒れ込んだ。僕はテレビのリモコンを投げ捨てると、濡れそぼった姉さんのあそこを深々と貫く。姉さんは背筋をしならせ、悦びの声をあげた。
「あ、あはッ……突いてよヒロ……い、いっぱい突いてようッ!」
 一もニもなく、僕は従った。

 明けて翌日。目覚ましのベルが僕を揺り起こした。
 昨日は朝から晩までずっとやりっぱなしだった訳だ。やれやれ。
 僕は傍らで寝入る姉さんに目を向けた。寝相の悪さは相変わらずで、枕も布団も相変わらず行方不明だ。素っ裸の姉さんを起こそうとした僕は、ふと異状に気づいた。
「あれ? 何だろ、これ」
 姉さんの頭上に浮かんだ「数字」が、昨日とは一変していた。僕の記憶が確かなら、昨日で「数字」は十余回に達していた筈だが、
「いち、じゅう、ひゃく、せん……ま、万? 何だよこれ」
 僕はハンドミラーを手に取ると、大慌てで自分の「数字」を確認する。「数字」は数千。昨日とは桁が違う。
「確かに、昨日はたくさんしたからなあ……じゃなくて!」
 僕は姉さんを叩き起こすと、ハンドミラーを手渡して事情を説明した。初めは寝ぼけ眼で「あ、朝立ち発見」などと馬鹿な事を言っていた姉さんだったが、「数字」の変化に気づくと顔をしかめて、
「これはニュースよね。ニュースを見るしかないわ」
 妙に自信のある声で断言する。僕としても異存はなかったので、とりあえずテレビのスイッチをオンにした。すると、
「……本日未明、値に変化のあった例の数字ですが、科学技術庁と米航空宇宙局NASAによって行われた共同調査の結果、この数字は本人が経験した自慰行為の回数であると判明しました。では、次のニュースです……」
 僕と姉さんは顔を見合わせ、互いの「数字」を確認した。て言うか姉さん、あなたのその回数はいったい何なのでありますか。
「凄え……オナニー馬鹿一代だ」
「いやああああああああああああああああああああああああッ!」
 姉さんは絶叫した。

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