『アップダウン・インサート』 中編

(下段)

 下田家の御主人と一緒にベッド下段へと降りてきた上村上美は、少しだけ乱れたシーツの上で素裸のまま正座すると、下雄と真正面から向かい合った。とりあえず三つ指ついて礼をしながら、
「ふつつか者ですが、どうぞ宜しくお願いします」
「はあ、いや、あの……そうかしこまられても」
 つられて下雄もぺこりと頭を下げる。
「それじゃあ始めましょうか。下田さん、ご要望はありますか?」
「ご、ご要望っすか? ええと……じゃあ胸を」
「胸と言うと、おっぱいですね」
 聞くまでもない事をわざわざ確認しながら、上美はにっこりと微笑んだ。剥き出しになった彼女の乳房は、稀有なサイズと重量感を誇っている。自分の胸を目にした男性がどういう行為を連想するか十分に自覚している上美は、変に楽しげな口調で「ご要望」の具体的なメニューを口にした。
「じゃあ、どうします? 揉むとか吸うとか挟むとか」
「揉む吸うはともかくとして……は、挟む?」
 下雄の訝るような声に、上美はくすくすと笑った。
「いやですよ下田さん、ぱいずりに決まってるじゃないですか」
 率直な表現でそう答えて返すと、何やら下雄はぐっと握り締めた拳をぷるぷる震わせつつ、
「ぜぜぜ是非ともそれをお願いします奥さんっ!」
「じゃあ、それで宜しいんですね。分かりました」
 上美は正座の姿勢からそのまま上体を倒し、ベッドの上へ仰向けに横たわった。大きく豊かな乳房は、上向きになっても形状を崩さない。柔軟な半球の頂点では、淡く色づいた慎ましげな突起が半ば勃ち上がっている。上美は左右の乳首を摘まんで、両の乳房を軽く持ち上げると、
「……それではどうぞ、いらして下さいな」
「お、奥さーんっ!」
 三流メロドラマによく出てくる間男めいた下雄の台詞に、上美は思わず吹き出しそうになった。
 下雄は膝立ちになって上美の腹を跨ぐと、いつの間にかすっかり大きくなって上を向いたペニスを押し下げて、高く吊り上げられた乳房の谷間へと挿し込んできた。上美が乳首を摘み上げていた手を離すと、白い柔肉の山は雪崩をうって崩れ落ち、挟み込んだペニスにぶつかって軽やかに弾んだ。乳房を跳ね返す張り詰めたペニスの硬さに、また上美は嬉しくなって微笑んだ。
「下田さんって、すごく硬いんですね……では失礼して」
 自分の股間へと右手を伸ばした上美は、中指と薬指を揃えて膣口にあてがい、二三度ゆっくりと抜き差しした。肉襞の狭間から滲み出した愛液が、二本の指を根元までたっぷりと濡らす。上美は左手の指先で亀頭を優しく摘んで固定すると、右手指に絡みついた愛液をペニスの胴や腹の部分へと塗りつけていった。
「い、いつも旦那さんと、こんな事してるんですか?」
「だってほら、ローションって高くて困りますもの」
 いささかピントの外れた答えを返しつつ、上美は蜜に濡れた指を膣とペニスに何度も往復させていく。この淫猥な作業を繰り返していくうちに、花弁が興奮に膨れ始めているのが分かった。
「……これくらいでいいかしら。始めますよ」
「はい」と相手が頷くのも待たず、上美は両の掌で左右から乳房を圧し合わせて、下雄のペニスをやんわりと包み込んでしまう。竿の部分は乳房にほとんど埋もれてしまったが、ひょいと顔を覗かせたままの赤黒い亀頭の色が、白い乳肉の中で際立って見える。
 先ほど塗りつけた愛液を潤滑油代わりにして、上美は乳房を支えている両手を前後させ始めた。甲斐甲斐しい手つきでペニスを柔らかく圧迫し、湿った柔肌で滑らかに擦り立てていく。
「下田さん、先っちょから、お汁が出てますよ」
「そりゃ……興奮しますよ、こんな気持ちいい事してもらったら」
「うふ。嬉しい事言って下さるんですね。サービスしちゃいます」
 心底から嬉しそうな笑顔を浮かべて、上美は透明な先走りを滲ませるペニスの先端へと舌を伸ばした。大きく開かれた唇から突き出された舌先が、尿道口の切れ込みを舐めくすぐる。その丁寧な奉仕に、下雄は喘ぎ交じりの呼気を更に荒げた。
 下雄のサイズに慣れてきた上美は、硬い勃起への奉仕を続けると同時に、両手の指先で左右の乳首を巧みに捉えて、しこった桜色の尖りをいつものように転がし始める。色の薄い上美の乳首は、揉み立てられ引き伸ばされて、徐々に硬さを増していく。胸を犯されるという行為が興奮剤となったのか、すぐに乳首の芯から疼くような快感が生じて、上美の白い肌を上気させていった。
 愛液と先走りに濡れた乳肉と、ちろちろと尿道口で躍る舌に責め立てられ、下雄のペニスは今にもはち切れんばかりに膨れ上がっている。激しく脈打つ勃起の限界を悟った上美は、
「出るときには言って下さいね。私、飲みますから」
 上目遣いに相手の目を見てそう告げると、また長く舌を伸ばして亀頭を舐め回した。先端から滲み出る先走りが、色、味ともに濃度を増していく。幾らも経たぬうちに、下雄は射精に到った。
「で……出ますっ、出ますっ!」
 切羽詰った叫びと共に、ペニスが一際大きく跳ねた。上美は首を起こして亀頭に吸いつき、最初の白濁を音も高く啜り上げた。そして唇を大きく開いて、続くニ射目、三射目を口で受け止める。勢いよく噴き出した精液は唇のみならず、頬や鼻の頭にまで幅広く飛散した。白濁が絡みついた舌を伸ばして、同じく粘液に汚された唇をひと舐めする。空気にさらされた精液の苦く青臭い味が、上美の口いっぱいに広がっていく。
「いっぱい出ましたね、下田さん」
「はあ、どうもすみません」
 精液まみれの笑顔に罪悪感を覚えたのか、下雄はベッド際に用意されていたケースからウェットティッシュを二三枚ほど抜き出し、上美の顔から乳房へと飛び散った粘液を丁寧に拭い去っていった。が、ティッシュから漂う淡いユーカリの芳香は、濃厚な精液の臭いと全然噛み合っていない。
 上美は乱れた呼吸をゆっくりと落ち着かせながら、下雄へと目を向けた。下雄もまた、ぼんやりと上美を眺めている。心地よい虚脱感の中で、どちらからともなく見詰め合った。
「すごい量でしたけど……まだ、出来ますよね?」
「ええ、それはそれはもう」

 下田下雄は激しい射精の余韻も冷めやらぬまま、相手の膝の裏に手を差し込んで太股を押し広げると、その間へ腰を下ろした。予想より濃く繁った恥毛の奥から、大振りな花びらが顔を出している。くすんだピンク色を呈した二枚の陰唇は、膣から溢れ出した蜜で既に濡れ光っていた。
「あ、もうだいぶ濡れてるみたいですね」
「ええ、びしょびしょですよ」
 率直な下雄の言葉に、上村家の奥方も極めて率直な答えを返す。
「私って本当に濡れやすくって……ひょっとすると前戯しなくても大丈夫なくらいなんですよ」
「いや、それはもったいないです。前戯は大切に」
 すっかり相手のペースに巻き込まれているような気がしないでもなかったが、まあいいかと自分に言い聞かせつつ、下雄はすっかりと開花し切った花弁を優しく弄び始めた。肉の厚い上美の陰唇は、見た目通り柔らかく弾力に富んでいて、なかなか弄り甲斐がある。その手触りについつい興じていると、
「……私のおまんこ、気に入られました?」
「結構なものをお持ちで……今、さらっとすごい事言いましたね」
「あら、世の殿方はこういう言葉がお好きだと聞いてたんですが」
「大好きですとも」
 下雄は立てた中指を秘裂へと挿し込み、起伏に富んだ上美の胎内をゆっくりと撹拌し始めた。しかし膣はもう既に緩んでいて、
「あの……もう一本、お願いできますか?」
 もどかしくなったと見える上美から、実に具体的な指示が飛ぶ。引き抜いた中指に人差し指を加えて突き立てても、さしたる抵抗は感じられなかった。膣肉が震えるように蠢くたび溢れ出てくる豊潤な蜜液が、指の先から掌まで浸していく。
「あふ、それ……す、すごくいい、です」
 手首を回して肉襞を撹拌し、指を交互に泳がせて奥を押し広げ、指先を曲げ伸ばして膣壁を撫で回すにつれて、控えめだった上美の喘ぎ声は、徐々に高く狂おしげなものへ変わっていった。
「ああんっ、くうっ……そこいい、ですっ、そこっ」
 やがて浅い絶頂を極めて息を乱れさせた上美に、下雄はおずおずと覆い被さりながら訊ねた。
「ええと、もうこの辺で入れておきたいんですけど、いいですか」
「……我慢なさってたんですか? 言って下さればよかったのに」
 上美は少しばかり呆れたような声で、
「でも、苦情は聞きませんよ。私だって欲しかったんですから」
 そう言いながら自分の秘所へ指を滑り込ませると、愛液にまみれ卑猥な光沢を放つ陰唇を掻き分けて、膣口を露わにする。指で押し広げられた肉色の洞穴は、僅かにひくつきながら蜜を垂れこぼしている。そこから漂い出る性臭は、驚くほど濃厚だった。
 ごくり、と唾を飲み込んだ下雄は、反り返るペニスの先端を上美の股間に押し当て、濡れそぼった花園を擦り立てた。亀頭と陰唇の粘膜同士が、蜜の中でねっとりと吸いつき合う。勃起しても小さなクリトリスを突ついてやると、上美は軽く腰を震わせた。
「もう、焦らすのお上手ですね。おねだりしないと駄目ですか?」
「そういう訳じゃ……あ、いや、それなら是非とも」
 上美は微笑んで頷き、こほんと咳払いをしてから、
「じゃあ……下田さんのちんぽ、私のおまんこに下さいな」
 余りにもストレートな単語で要求を伝えてくる。こんな単純な事で興奮するなんて情けないなとは思いながらも、下雄は股間に血が集まるのを自覚する。男ってバカだ、と思った。
 柔らかく亀頭を包み込んでいる花びらを押し分けながら、下雄はゆっくりと腰を突き出していく。肌よりもずっと温かい膣肉の感触を味わいながらペニスを奥へ進めるにつれて、上美の唇から小さく途切れがちな喘ぎ声がこぼれた。
「あ……ん、すご……硬い」
 上美の中はゆとりある広さで、ペニスを激しく締め上げるような激しさこそなかったものの、何重にも折り畳まれた無数の肉襞が、くすぐるような柔らかさで下雄を押し包み、撫で上げ、誘い込んでいく。どこか安心感にも似た奇妙な悦びを感じながら、下雄は自分の分身を少しずつ根元まで挿し入れていった。
「うあ……すげぇ気持ちいいです、絡みついてくるみたいだ」
 あらあら、と上美は楽しげに笑って、
「私も気持ちいいですよ。でも……あの、ですね」
「はい、なんですか?」
「その……私のおまんこ、緩かったりしませんか? あんまり強く締めつけたりとかするのって、上手じゃないですから」
 やや伏目がちになって、おずおずと恥ずかしそうに告げる上美。今度は下雄が苦笑する事になった。
「んなこたあないです。そもそも締まればいいって訳でもないし、奥さんのココは自慢出来るくらい具合いいです。俺認定」
「くふ……ん、う……」
 下雄はおもむろに腰を遣って、柔軟な肉襞がみっしりと詰まった膣内をじわじわと掻き混ぜ始める。欠伸にも似た喘ぎ声を吐き出しながら、上美が裸体を緩やかにくねらせる。
 先ほどペニスを射精へ導いた乳房へ手を乗せると、尖った小さな乳首が何とも掌にくすぐったい。下雄は、揉むというより乳房全体を転がすような手つきで上美の胸と戯れた。うっすらと仄かな桜色に染まった乳肉は、指を沈めると思いのままに形を変える。
「奥さん」と呼び掛けてキスを乞うと、上美は薄開きにした唇から舌を突き出てきた。下雄も唇を開いて舌を伸ばすと、相手の舌先に軽く押し合わせる。両者は口を開いたまま舌を絡めては離し、突き放しては引き込み、互いの唾液を啜り合って喘いだ。唇自体は一度として触れ合わぬままの、実に風変わりで淫らなキスだった。
「なんか俺、おかしいです。全然動いてないのに、もうイきそうになってます……こんなの初めてだ」
「ひょっとすると、相性がいいのかも知れませんね、私もです」
 潤んだ瞳で答える上美に頷き返すと、下雄はペニスを雁首の辺りまで引き抜いて、そしてまたゆっくりと挿し込んでいった。下雄と上美の唇から小さな、しかし確かな悦びの声が溢れ出る。
「あ……下田さんの……ちんぽ、すごく膨れて……震えてますよ」
「え、ええ……もう、我慢が効かない、みたいで」
 根元まで膣に収まるのと同時に、下雄のペニスは限界を迎えた。膨れ上がった亀頭が肉襞に包まれながらびくびくと痙攣し、大量の精液を体奥へ何度も繰り返し注ぎ込んでいく。射精の時間は意外なほど長く、下雄は温かく柔らかな上美の膣肉に包み込まれたまま、溶けるような快感と不思議な幸福感とを感じた。
「また、いっぱい出ましたね、下田さん」
「はふぅ……本当に。なんか、すごい勉強させて頂きました」
 下雄はかしこまってそう答えた。実際、こんな穏やかなセックスは初めての経験だった。激しい抽送や荒々しい腰遣いとは無縁の、まるで微睡んでいるかのような肉の交え方に、下雄はすっかり惹き込まれてしまった。
 射精直後の呆けたような様子が可笑しいのか、上美はくすくすと笑いながら身体を起こして下雄に背を向けると、
「そうですね……でも私、激しいのも好きですよ」
 四つん這いになって尻を掲げ、股の間から潜らせた手でまだ充血したままの花弁をくつろげる。
「ウチの人、始めると長いんですよ。終わるまでにまだまだ時間が掛かると思いますから……今度は後ろから犯して頂けませんか?」
 薄く開いた陰唇の狭間から、白濁した精液が愛液と交じり合いながら滲み出て、糸を引きながらシーツに滴り落ちていく。
「それでは……お、奥さーんっ!」
 下雄は一も二もなく、上美の尻へと飛びついた。
 上村・下田家の夜は、まだまだ長く続きそうだ。

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